俺がよく連れていってもらっていたスーパーのゲームコーナーにはもちろん普通のいわゆるビデオゲームも置いてあった。テーブルの中に画面が埋め込まれている今ではレトロな喫茶店くらいにしか置いていないあれだ。だが当時もプレイ料金は100円。100円しかもらっていなかった俺にはとてもできない代物だった。だから年上の高校生くらいの人たちのプレイを横目で見ていたりして自分がやってもいないのに楽しんでいた。
マヌケな声で「イテッ!」とかいうゲームが一番のお気に入りだった。クレージークライマーである。高校生くらいの俺からしたら大人な人たちが手際よくビルを上っていく。風船に捕まりビルを上り、なぜか途中にいるゴリラを避けヘリコプターにたどり着く。大人が見るようなお笑いのテレビも好きだったので、しらけ鳥の曲は聞いたとたんにニコニコしてしまった。
誰もやっていないときはこのデモ画面をひたすら見て二本のレバーをガチャガチャとやっていた。もちろん当時はやったこともないのでレバー二本でどうやって上っていたのかもわからなかったが、それでやった気になっていた。エアプレイである。確か二本のレバーを交互に上下させてたな。避けるときはどうしてたんだろう?そんな事を思いながらレバーをガチャガチャさせる。飽きるとまた10円玉を握りしめて他のゲームをしていた。
ある日のこと。また高校生くらいの “大人” が5人くらいでやってきた。またクレージークライマーが見られるのか。プレイできない分、見られるのはワクワクした。子供心にもいきなりそこに行って見るのは気が引けたので、見たい欲求を我慢してある程度ステージが進んだ頃に見に行った。ちょうどゴリラを避けていた。ゴリラの攻撃を避けようとクライマーが横にスライドしそして登り出す。ゴリラが動き腕がクライマーを直撃した。落ちていくクライマー。終わった。
「いいよ。いいから。」高校生たちがコソコソと話し出す。もう一回やって欲しかったのでまた100円を入れるものだとばかり思っていた。プレイしていた人が突然テーブルの下に手をつっこみ電源を切った。そしてまた入れた。さらに切ってまた入れた。俺は頭の中が?でいっぱいになった。
スタート音だ!そしてゲームがはじまった。俺はとっさに見て見ぬ振りをしていた。もちろんこいつらが悪いことをしていると思ったからだった。
彼らはゲームを無料でプレイしていたのだ。俺も誰もいないゲームコーナーでおそるおそる同じ事をしてみたがゲームは始まらなかった。彼らは何をしていたのだろうか?あれは未だ持って謎である。

