ふぁみこんせだいのいろいろ

のうみそのなかみ

昭和

ドラキュラは永遠に

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今の小学生はどういうところでおやつを買うのうだろうか。俺が子供の頃は団地の中にあるH商店で毎日買っていた。H商店は小さい商店だったが団地の人のほとんどが利用するのでわりと繁盛はしていたんだと思う。毎日そこへ100円を持って買い物にいくのが日課だった。当時は消費税なんかないから1円単位の計算は発生しなかった。だからどうやって100円ぴったりにするかの計算は速くなった。
 H商店は魚も扱っていたので魚の生臭い臭いがしていた。床はコンクリートの打ちっ放し。魚の入っていた発泡スチロールを洗ったと思われる水がそのまま流れていたから床がところどころ濡れていた。そんな田舎の小さな商店が俺の子供の頃の大好きな場所の一つだった。

夏の暑い日はアイスだった。当時のアイスはだいたいが50円前後。あのガリガリ君も50円だった。30円や20円のアイスもあった。パピコは確か80円、贅沢な品だった。そんな時代ある衝撃的なアイスが発売された。ドラキュラのアイスだ。正式には「クロキュラー」というアイスだったらしいが、俺たち子供の間ではドラキュラアイスだった。ドラキュラが描かれたパッケージを開けると中には真っ黒のアイス。黒の中に赤いアイスが入っていてたぶんイチゴ味だったと思う。食べた後は舌が真っ黒になった。どう考えても体に良いと言えるアイスではなかった。ちなみにこのアイスは2012年くらいに一度復刻したらしいが食べる気は全くしなかった。

俺はクジ運が悪い。だからコカコーラのヨーヨーも当たらなかったし、ジュースもアイスも滅多に当たらなかった。しかしこのクロキュラーは初めて食べた時に当たりが出たのだった。当たればもう1本もらうことができる。当たりの棒を大事に握りしめウキウキでH商店に向かった。H商店のおばちゃんは団地の子供のことをだいたい知っていたから良かったね。と声をかけてくれた。だがもう1本のドラキュラアイスの味は正直おいしくなかった。飽きていたのかも知れないがそこにちょっとした罪悪感があったからだった。

H商店と目と鼻の先にゴミ捨て場があり、そのゴミ捨て場の近くに誰も使わない為、毒キノコが生えだしている様な木のテーブルとベンチがあり、俺はそこでドラキュラアイスをひとり食べていた。 外で一人で食べていた理由はひとつ。アイスはおなかを壊す。だから1日1本。そう親に言われていた。1日にアイスを2本も食べたと知られたら怒られるからだ。2本目のドラキュラアイスがおいしく感じなかった罪悪感とはそれだったのだ。早く食べて早く帰りたい。そう思った時だった。棒の先から文字が出てきた。

「当たり!もう1本」

望まぬ時に事は起こるものである。

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