ふぁみこんせだいのいろいろ

のうみそのなかみ

ファミコン 昭和

エレベーターアクションというゲーム

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ファミコンの代表作に「エレベーターアクション」というゲームがあった。 主人公はスパイとなって屋上からビルに潜入し、機密書類を盗み出すとかそんなゲームだったと思う。
 俺が住んでいたのは田舎にある貧乏団地。いわゆる公営住宅ってやつだ。親がだいたい同じくらいの世代だった為、団地には当然同じくらいの年齢の子供たちが何人か住んでいて、ファミコンを持っている子もいた。うちにはファミコンは無かった。

みっくんという4つ年下の子がいた。彼の家にはファミコンがあった。みっくんのお母さんはちょっと怖い感じの人で、今の時代にいたらヤンキーとかそんな感じだっただろう。俺たちはみっくんの家に押しかけてはファミコンをした。ゲームは何でも良かった。ゲームをしているというより、とにかく“ファミコン”をしているのが楽しかったのだ。何ならルールなど全く知らない麻雀でも良かった。やたらボタンを押すと、変な音がテレビから流れ、「ノーテンチョンボ」という文字が出てくる。それだけで俺たちはゲラゲラと声を上げて笑っていた。そんなファミコンのカセットの中にエレベーターアクションがあった。

さっそくみんなでやってみる。説明書なんか初めから無かった。いやあった筈だが読みもしなかった。主人公が何をすべきなのか?小学生の俺たちにはわからなかった。とにかく不思議なエレベーターに乗りエスカレーターの様な非常階段の様なものに乗りビルを移動しまくり現れる敵をひたすら倒す。間違ってライトを撃ってしまうと画面が真っ黒になって何も見えなくなった。
「あれ?1階に駐車場がある!あれに乗ればいいんじゃない?」
誰かが言った。みんなでその駐車場を目指した。そしてついに車にたどり着く。しかし主人公は無情にも上の階に戻される。
「どうしたらクリアできるんだろう」
「敵を倒せばいいんじゃない?」
俺たちは主人公がスパイであることも、重要書類を盗むことも全くわからなかった。そのうち時間が経ち、敵の攻撃は次第に激しくなってくる。主人公は何もしないまま為す術無く敵に撃ち殺されてのたうち回る。そうこうしているうちに30分が経過し俺たちは家を追い出された。そうファミコンは30分だけ。そうあのお母さんに言われていたのだ。怖いから家を出て行く。そしてサッカーを始めると、ファミコンのことはすっかり頭から抜けていた。

数年後、中学生になった俺はあの団地から引っ越しファミコンを手に入れていた。ある日、父親の会社の人が家に飲みに来た時自分が遊んだファミコンのカセットを袋いっぱいくれた。当時の子供にとっては宝の山である。その中にあのエレベーターアクションが入っていた。みっくんの家のでの思い出がよみがえる。これってどうすればクリアできたんだろう?中学生の俺ならその謎が解けるかもしれない。

カセットを差し込み電源を入れてみる。懐かしい音が流れゲームが始まる。あれ?こんな感じだったっけ?俺はそのエレベーターアクションに違和感を感じていた。エレベーターを下がっていく。赤い扉がある。何だこれ。迷うこと無く赤い扉に入って行く。
テテテッテ...
主人公が何かノートの様な物を抱えて扉から出てきた。頭上にはスコア。え?またエレベーターを乗り継ぎ赤い扉に入る。そして一番下までたどり着いたとき、地下駐車場に止めてあった車が動いた。俺はエレベーターアクションを始めてから3年ほどしてようやく1面クリアに成功したのだ。
 みっくんの家ではなぜ赤い扉が出てこなかったのだろう。その謎はすぐに解けた。みっくんの家にあったファミコン用のテレビは白黒テレビだったのだ。しかもかなり古いテレビだったに違いない。赤い扉も青い扉も「黒い扉」だった。俺が感じた違和感はカラーで表現されたエレベーターアクションだったから。ライトを間違えて撃っても画面は少し青くなるだけ。俺たちは最高難易度のエレベーターアクションで遊んでいたのだ。

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